ローカルLLMや画像生成を自宅ラボで動かしていると、次に欲しくなるのは単純なCPU性能だけではありません。大きめのモデルをどこまで載せられるか、NASや別ノードとの間でどれだけデータを動かすか、後からネットワークやストレージを足せるか。このあたりが、購入後の使い勝手をかなり左右します。
GMKtec公式ストアでは、2026年7月4日から7月20日まで「プライムデー特別セール」が開催中とされています。2〜5台同時購入で最大8,500円オフ、購入金額に応じたUSBハブ等の特典も案内されています。特典は公式ストアのみで、Amazonでもセール予定とされています。価格や在庫、為替、構成別価格は変動するため、購入前には必ず現在表示を確認してください。
今回の焦点は、Ryzen AI Max+ 395搭載機をどう選ぶかです。特にGMKtec EVO-X2とMinisforum MS-S1 MAXは、同じ方向を向いているようで、ラボへの組み込み方がかなり違います。
前提:単体PCではなく、ラボの一部として見る
うちのラボではRTX 3090 TiのVRAM 24GBで画像生成やローカルLLMを回していますが、VRAM容量は常に制約になります。ラボ全体の構成は自宅サーバ5台+GPU2枚で「実際に試す」ラボを組んだ──全機材と選定理由で整理している通り、単体PCではなく複数ノードを前提にしています。ネットワークも自宅ラボのネットワークの土台 — セグメント分けと有線/無線・速度の決め方で書いたように、有線セグメントを土台にしています。
そのため、Ryzen AI Max+ 395機を見るときも、単に「128GBメモリが載る小型PC」では終わりません。その箱が、ラボのどこに置かれ、どれだけネットワーク越しにデータを流すのかまで見ます。
128GB統合メモリの価値
Ryzen AI Max+ 395の価値は、CPU/GPU/NPUが同一メモリを共有するユニファイドメモリ構成にあります。公称仕様では、256bit LPDDR5X-8000で帯域は256GB/s。128GB構成なら、量子化70BクラスのローカルLLMを、一般的なGPUのVRAM容量の壁にぶつからず載せられる可能性があります。
これは、VRAM 24GB級のGPUを使っている環境から見るとかなり大きい差です。もちろん、実際の速度や運用感はモデル、実装、量子化方式、ランタイムに依存します。ここでは未検証のベンチマークは書きません。ただ、容量面の制約が緩むこと自体は、ローカルAI箱として明確な魅力です。
GMKtec EVO-X2:安く128GB統合メモリを取りに行く候補
GMKtec EVO-X2は、Ryzen AI Max+ 395、Radeon 8060S、XDNA2 NPUを搭載し、メモリはLPDDR5X-8000のオンボード64GBまたは128GBです。ストレージはM.2 2280 PCIe 4.0が2スロット、最大16TB。ネットワークは2.5GbE×1、WiFi 7、BT 5.4。USB4は前面と背面に1つずつあります。
執筆時点の公式ストア表示では、セール価格は$1,999.99から、通常価格は$2,199.99からとされています。構成により変動し、円建ては日本公式ストアで確認が必要です。
EVO-X2の強さは、128GB統合メモリのRyzen AI Max+ 395機を、比較的手が届きやすい価格帯で狙えるところです。単体のAI箱として、ローカルLLMを置く。開発機の横に置く。必要なときに推論を投げる。こういう使い方なら、かなり魅力があります。
一方で、ラボのバックボーンに本気で組み込む場合、2.5GbE×1は細く見えます。NASとの大容量データ往復、分散処理、複数ノードからの利用を考えると、有線ネットワークの太さは後から効いてきます。USB4経由で10GbE化する手はありますが、USB4ポートを1つ消費し、安定性も自分の環境で検証する必要があります。
Minisforum MS-S1 MAX:ラボに深く組み込む候補
Minisforum MS-S1 MAXも、同じRyzen AI Max+ 395を搭載する候補です。メモリはLPDDR5X-8000のクアッドチャネルで最大128GB。ネットワークは10GbE×2。さらにPCIe x16フルレングススロットを備えています。USB4 V2、WiFi 7もあります。電源は160Wピーク、130W持続とされています。
米国価格は執筆時点で$2,959〜$3,039程度。EVO-X2とは、およそ$1,000の価格差があります。
MS-S1 MAXの魅力は、ラボ用途の逃げ道が多いことです。10GbE×2が最初からあるので、NASや高速セグメントへの接続を考えやすい。PCIe x16が空いているので、将来NIC、キャプチャカード、ストレージなどを足す余地があります。単体AI箱というより、ラボ内のAIノードとして長く扱いやすい形です。
ただし、その余地に$1,000前後を払う意味があるかは、運用次第です。ローカルLLMを一台で動かし、結果を手元で使うだけなら、EVO-X2の方が合理的に見えます。逆に、NASからモデルやデータを頻繁に読み、複数端末から叩き、将来の拡張も見込むなら、MS-S1 MAXの方が後悔しにくい設計です。
比較表
| 観点 | GMKtec EVO-X2 | Minisforum MS-S1 MAX |
|---|---|---|
| 位置づけ | 単体AI箱として128GB統合メモリを狙う候補 | ラボのAIノードとして組み込む候補 |
| CPU | Ryzen AI Max+ 395 | Ryzen AI Max+ 395 |
| メモリ | LPDDR5X-8000、64GBまたは128GB、オンボード非増設 | LPDDR5X-8000、クアッドチャネル最大128GB |
| ネットワーク | 2.5GbE×1、WiFi 7、BT 5.4 | 10GbE×2、WiFi 7 |
| 拡張性 | USB4×2、M.2 2280 PCIe 4.0×2 | PCIe x16フルレングス、USB4 V2 |
| 執筆時点価格 | セール$1,999.99〜、通常$2,199.99〜 | 米国価格$2,959〜$3,039程度 |
| 主な弱点 | 有線が2.5GbE×1で、ラボの太いバックボーンには物足りない場合がある | EVO-X2よりおよそ$1,000高い |
向いている人、向かない人
EVO-X2が向いている人
- 128GB統合メモリのRyzen AI Max+ 395機をできるだけ安く確保したい人
- 単体でローカルLLMを動かしたい人
- 開発機とは別にAI箱を置きたい人
- 2.5GbEで足りる範囲から始めたい人
EVO-X2が向かない人
- 最初から10GbE前提でNASと大きなデータを頻繁に往復させる人
- PCIeカードを後から挿したい人
- USB4ポートをネットワーク拡張で埋めたくない人
MS-S1 MAXが向いている人
- AIノードをラボの中核に近い位置へ置きたい人
- 10GbE×2を最初から使いたい人
- PCIe x16で将来の拡張余地を残したい人
- NASや別ノードとの大容量データ移動を重く見る人
MS-S1 MAXが向かない人
- 単体AI箱としての価格効率を最優先する人
- PCIe拡張や10GbE×2をすぐ使う予定がない人
- 価格差を別のNAS、SSD、ネットワーク機材へ回したい人
自宅ラボのAIサーバとして見る:小型LLMなら64GBで足りる
もうひとつ、うちのラボの運用実感からの評価軸を足します。「常駐のAIサーバとして小型〜中型のLLMを飼う」用途です。
うちでは ollama で32Bクラスの量子化モデル(Q4)を常駐させていますが、モデルがメモリに載っている実測サイズは約22GBです。つまり7B〜32Bクラスを APIサーバとして1〜2本常駐させるだけなら、128GBはそもそも要りません。64GB構成で十分に余ります。
推論APIのやり取りはリクエストもレスポンスもテキストで、ネットワークを流れるのはKBオーダーです。この使い方に限れば、EVO-X2 の 2.5GbE×1 でまったく困りません。ネットワークの太さが効いてくるのは、モデルファイルの配布や学習・検証データの往復といった大容量転送の方です。
- 小型LLMの常駐APIサーバが主目的 → セール中の EVO-X2 を64GB構成で。この用途では一番安く仕上がります。
- 70Bクラスを1台で狙う・複数モデルを同時に飼う → 128GB構成の出番です。ここで初めて、前後の章で述べたメモリ容量とネットワークの議論に戻ります。
参考までに、うちの専用GPU機(VRAM 24GB)では32B Q4クラスがほぼ上限で、それより大きいモデルは載りません。395系の価値は生成速度そのものより「大きいモデルが載ること」にあり、小型LLM止まりなら64GBで一段安く、という整理です。
迷ったら、ネットワーク越しのデータ量で決める
迷ったときの基準は単純です。その箱に、ネットワーク越しでどれだけデータを流すか。
ローカルLLMを単体で抱え、たまに推論を投げる程度なら、セール中のEVO-X2は強い候補です。128GB統合メモリを主目的にするなら、かなり分かりやすい選択です。
一方、NAS、別ノード、複数端末、分散処理、将来の拡張まで含めて考えるなら、MS-S1 MAXの10GbE×2とPCIe x16は重みがあります。ラボ機材は、買った瞬間よりも、半年後に足したくなる機能で評価が変わることがあります。
購入リンク
GMKtec EVO-X2(Ryzen AI Max+ 395 / 64GB・128GB統合メモリ)
プライムデー特別セール対象(〜7/20)。複数台割引・周辺機器特典は公式ストア限定です。
GMKtec公式ストアで見る Amazon.co.jpで見るMinisforum MS-S1 MAX(Ryzen AI Max+ 395 / PCIe x16 / 10GbE×2)
ラボへ深く組み込むならこちら。セール対象外でも拡張性が効きます。
Amazon.co.jpで見る※本記事の購入リンクにはアフィリエイトリンクを含みます。Amazonのアソシエイトとして、当ラボは適格販売により収入を得ています。価格・在庫は変動するため、購入前に各ストアの現在表示をご確認ください。
購入前の注意点
Ryzen AI Max+ 395機は、メモリがオンボードで後から増設できません。64GBで始めて、後から128GBへ、という選び方はできません。ローカルLLMを本気で見るなら、購入時点で64GBか128GBかを決め切る必要があります。
また、セール価格、在庫、特典、為替、国内表示価格は変わります。本稿ではUSDの執筆時点表示をそのまま扱い、円換算はしていません。実際の購入判断では、公式ストアの現在表示を確認してください。
結論
128GB統合メモリをなるべく安く手に入れ、単体AI箱として運用するならEVO-X2。ラボの有線バックボーンへ本格的に接続し、10GbEとPCIe拡張まで見込むならMS-S1 MAXです。
ローカルAI機材は、スペック表の最大値だけでは決めにくい種類の買い物です。どのモデルを載せたいかだけでなく、その箱の外へどれだけデータを出し入れするか。そこを先に決めると、選択肢はかなり静かに分かれます。
なお、用途が小型LLMの常駐サーバに絞れるなら、64GB構成のEVO-X2という第三の答えもあります。
この検証を回している環境
この検証は、自宅の常設ラボ(使い捨てVM/LXCを回す母艦+GPU+VLAN分離ネットワーク)で動かしています。使っている機材と選定理由、全体構成は1本にまとめています。
ラボ構成のまとめを見る →